カドバリバリの話

昔、カドバリバリと称する女人ばかりの社あり。彼等は男の到るを見れば、抱き締め或は抓りて殺し、其肉を截りて乾し堅め、其を貯え置きて、淋しき折には其香を嗅ぎて慰めり。或時猿を其処に遣りしに、毛皆抜き取られて追い返されたり。

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「女人部落」「女人村」、離島の場合は「女護島」などとも言う、「女だけの村」というモチーフ。
台湾原住民の間では良くあるもので、このブログでも何度か取り上げています。



















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今回の事例では女人部落の女がどうやって子孫を残して行くのかには興味がないようです。

上にあげた事例では「女人部落の女は陰部に風を受けて妊娠する」「外の男をつかまえて生殖を行い、女子は生かし、男子は殺す」などと言われます。

しかし今回の事例では、男を見つけると殺してしまう。そしてその肉を干して保存するといいます。
淋しい時はその干肉の香を嗅いで紛らわせる、狙われるのは男だけ?というのは「女性性」を表しているとも言えますが、正直こうなると「女性」である必然性はあまりなく、ただの「食人鬼」のようにも思います。

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「猿を送り込んだ」とありますが、これは「猿を身代わりにしてみた」ということでしょうか?
ちょっと意図がよくわかりません。

その猿が「毛をむしられて追い返された」というのは、「獣ではなく人間の男を寄こせ」という意味なのでしょうか?

このくだりは良くわからない部分ですが、一応は「人間の男のみを殺す、女だけの村」という性質を強調していると考えるべきなのか?

因みに、プユマ族には猿婿始祖神話もあります。それとの対比で考えるなら、この「カドバリバリ」という女人社の非人間性はより強調されることになるでしょう。



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「女人部落は恐ろしい・・・」という伝承は多いのですが、「女人部落と戦って勝利した」という伝承は少ないです。しかし聞いたことはあります。

私がセデック族の人に聞いた話では、「女人部落の女たちは戦いに敗れて、豆の中に逃げ込んだ」という小人伝承に通じるようなモチーフを持つ事例もあったようです。

あとは「蜂を操った」「料理の湯気だけを吸い、料理自体は食べない」「肛門がない」などという、他の異民族伝承・異能者伝承に登場するモチーフが付随することもありますね。